実際に父親はなかなか昇給も昇格もさせてもらえず、後輩に追い越されてばかりだった。
母親はスーパーでパート社員として働きはじめ、その頃から更に夫婦関係は冷たくなって行ったようだ。

そんな中でも夏波はすくすくと成長し、大学在学中にアロマ関係の仕事に付くことを夢見た。
それからは猛勉強していて、夫婦関係がこじれていっていることに気がつくことができなかった。

父親は相変わらず優しくてマイペースで、それが仇になって様々な責任を押し付けられた。
その責任まで忠実に請け負ってしまった結果、病気がちになりはじめたのだ。

ただでさえ苦しい生活の中で父親の収入が途絶えるのは確かに痛かった。
だけど夏波はもう大学生だ。

アルバイトをしてそのお金を少しでも家に入れるようになった。
これで父親が回復してくれればいい。

そう、思っていたけれど……。
ある日父親が起きてこなかったのだ。