伊吹がなにもしてこない理由も、そして『十分やってもらってる』と言ってきた理由も。
そもそも体を売らなければならないほどの借金を背負っていないからだ。


「私はどうして、ここに?」


質問する声が震えてかすれた。

なんとなく予想はついているものの、伊吹から直接話を聞くことですべてがリアルになってしまう。
それが怖かった。


「お前の母親は最近ホスト通いにハマっていた」


伊吹の言葉に心臓が痛くなる。
夏波には何も言ってこない母親だけれど、そうだとは思っていた。

父親がいなくなってからは男に頼って生きてきた人だし、異性が好きなことはわかっていたつもりだった。


「そこで借金ができたんだ」

「30万円……」