手前側の壁がクローゼットだ。
なにかがあるとすれば、クローゼットの中しかない。

ここでも物が少ないことが功を奏して、クローゼットを開くと上段と下段で別れていた。
上段には伊吹の服が掛けられていて、下段は引き出しになっている。

夏波は膝をついて引き出しを確認していく。
上段からかすかに伊吹の匂いが香ってきて、今にも声をかけられそうな気がしてドキドキした。

そして10分ほど調べたところで、透明なファイルを見つけた。
表紙にはなにも書かれていないけれど、中を確認してみると重要書類が挟まれていることがわかった。

この部屋にはパソコンらしきものがないから、アナログのカタ法で保管してあるとは思っていたけれど、こんなに簡単に見つけられるところにあるなんて。

内心呆れながらも書類を確認していく。
案の定、それは借用書だった。