家に戻ったときにはすでに私が借金のカタになることが決まっていたことは、なんでなの?
この時代に人身売買に近いことをするのだから、てっきり返済できない金額の借金があるのだと思い込んだ。

だから金額について伊吹に質問することもなかったのに……。
30万円。

一月で稼げる程度の金額で、私は今ここにいるの?
理解したくないのに頭はやけに冷静で、それがなにを意味しているのかわかってきてしまう。

母親は、父親に似ている自分までもうとましく感じていたんだ……。
そう思うとしらない間に涙が流れていた。

頬を伝い、床に落ちる。
夏波は手の甲で涙を乱暴にぬぐってスマホを引き出しの奥に仕舞い込んだ。

泣くのはまだ早い、
新の言っていることが本当かどうか確かめないとけない。
新のことを信用していないわけじゃないけれど、母親が嘘をついた可能性はある。