次の日に目を覚ますと伊吹はすでに家を出た後だった。
朝ごはんの準備ができなかったことを悔やみながらも、スマホを隠している引き出しに飛びついた。

案の定の、彼氏の新から返事が来ている。
床に座り込んで確認すると、夏波の母親と連絡を取ったとあった。


『詳しく話を聞いてきたよ。借金の残りはたった30万だ。夏波がそこにいる必要はないんだよ!』


30万……?
それくらいの金額なら夏波の貯金からだって出せる。
母親だって、そのくらいは持っているはずだ。

じゃあどうして私はここにいるの?
借金のカタにヤクザに売られるような真似を……?

仕事から家に戻ったときに打ちひしがれていた母親の姿を思い出して、夏波の背筋がぞっと寒くなる。
あんなに落ち込んで、うずくまって、小さくなっていたのはなんだったの?