初恋は、俺が幼稚園に通っていた頃だった。
今でも葵凪の事は鮮明に覚えている。


葵凪と出逢った場所は、
砂場とブランコしかない小さな公園だった。

敷地が狭いこともあり、俺以外の子供が遊んでいる姿はあまり見かけなかった。

ある日、いつものように母親と2人でその公園へ遊びに行くと、見たことの無い女の子が1人でいた。

俺は、何故か彼女に惹かれた。
母親に促され、砂場の砂を懸命に掘る女の子に声をかけた。

その女の子は、葵凪と言った。

「おとうさんもおかあさんも、お仕事なの。いつもは違うお仕事だったけど、今日から新しいお仕事なの。」

きっと、あの時葵凪が言いたかったことは、
両親が転職し、家で留守番することになったということだろう。


それから毎日、一緒に遊んでは泥だらけになって親に叱られていた。

葵凪は、どうだったのだろうか。

自分でも怖いくらいに記憶が鮮明だ。