「そっかー、頭撫でられたの嫌だったかー。それにしては気持ちよさそうな寝顔してたけどなー。」
「なっ…!」
――昨日、五十嵐くんに寝顔見られたんだ!はずっ!
一気に顔に熱が集まる。
そんな私を見て、五十嵐くんはまた揶揄うようにして「かーわいっ」て言う。
もう、心臓に悪いからやめて欲しい…!
「ってことで、お大事に!」
「えっ!?」
来てくれないの?、なんて言葉を続けていいか分からなくてやめた。
私の傘の下から抜けた五十嵐くんは、私の方を振り返りながらニカッと笑うと「また後でな!」と言って、雨の降る中、走って部室へ向かった。
――揶揄われた…。残念、なんて思っちゃう私、贅沢だよね…。
でも、よく考えてみれば、私の頭を撫でたって五十嵐くんは何も得しないんだから。
私だけいい思いしようなんて、わがままだ。
そう思いながら、保健室へ向かった。