「じゃあ実里(みのり)、よろしくね」

「はーい。気をつけてね!」


おばあちゃんは近所にある畑へと向かって行った。


この熊田商店はおじいちゃんが6年前に亡くなってからおばあちゃんが一人で切り盛りしている。


ほとんど顔馴染みの人しかいない治安の良いこの町では、女子高生が一人で店番をしても問題はない。


両手で数えられるくらいしかお客さんも来ないから。



ギシッとレジの古びた椅子に腰掛け、カウンターに課題を広げた。


冷房の効いているこの店内で、お客さんのいないこの暇な時間は課題をするのにもってこいだ。


夏休みの課題もスルスルと捗(はかど)る。



チリンチリンッ


来店を知らせるドアの鈴が鳴り、慌てて課題を横に押し退け椅子から立ち上がった。


「いらっしゃいませっ」