そして自宅にいる間は、大和と操縦についての勉強会をした。

スタティック プロシージャー トレーナーという、コックピットの写真を立体的に貼った練習機材を使って、一連の操作手順を忘れないようにプロシージャーを毎日行う。

エンジンスタートプロシージャーやエンジンファイヤープロシージャーなど。
エンジン火災の場合はまず警報を止め、どちらのエンジンから火が出ているかを確認する。
スラストレバーを引き、 燃料弁を閉じ、油圧装置や発電機を停止、鎮火しなければ消火剤を噴射する。
などの決まった手順を、頭で考えなくても出来るように身体に染み込ませていなければならない。

他にも、大和が色々なシチュエーションでの対応を質問する。

「じゃあ、このフライトルートで飛行中、積乱雲がこの位置に発生したら?」
「はい。燃料の重さを考えると上昇は見込めません。風向きを考慮して左側に避けます。右翼に少し引っかかるので、キャビンにシートベルト着用サインを出します」
「うん、いい判断だ」

更に大和は、計算式を書き込みながら揚力や風の抵抗、バンク角を何度取ると飛行機はどうなるか、など、飛行力学を詳しく恵真に説明する。

教材に載っている事を、噛み砕いて分かりやすく説明してもらい、恵真は何度も頷きながら理解を深めていく。

実際に空は飛べなくても、こうして日々学ぶ事は出来るのだと、恵真は自信がついた。