顔を真っ赤にしながらあわあわする陽乃に、からかいたくなる気持ちが止められない。
……俺、こんなんだったっけ。
……いや、違う。こんなんじゃなかった。
時間が止まったような俺の世界を、陽乃が変えてくれたんだ。
俺のいろんな感情を……この短期間で引き出してくれた。
「あーあ。陽乃が俺をこんなにしたんだよ」
「私が…っ?」
「だから責任とって」
「…っ!ど、どう取ればいいのでしょう……っ?」
「んー、と」
「え、なに春哉先輩、近……っ!?」
どう取ればいいか……ねぇ。
そんなの決まってる。
そう思って、陽乃にグイッと顔を近づける。
顔がくっつきそうでくっつかないこの距離で、陽乃の目を見てふっと笑って。
「俺のことを好きになればいい」
そうハッキリと言った俺の発言に。
陽乃は耳まで赤く染めながら、俺の瞳を逸らせずにいた。
苦いようで甘い恋の駆け引きは、始まったばかり。
番外編『ビタートリック』fin.