……何を言う気なんだ?
天瀬のいつもの声と違う。
どこか震えてるようにも聞こえて、必死に声を拾おうと耳を澄ます。


「春哉先輩が女嫌いなのを理由にして、自分からそういう些細な質問もできないんですよね?」

「……は」

「女嫌いだからなんですか?そんなの知ってる。結局、先輩達が春哉先輩に話しかけないのは女嫌いだからじゃなくて、春哉先輩が怖いからでしょ」

「…っ!」

「春哉先輩が嫌がることは私しません。あの人は、嫌なことは嫌ってはっきり言ってくれる人です。春哉先輩にとってなにが嫌とか、先輩達が決めつける立場じゃない」


力の籠った声ではっきりそう言う天瀬に、目を見開く。
……なんでこんなに、強いんだ。
でもどこか……脆くて壊れそうな感じ。

ああ……もういい、認める。
俺は……ずっとどんなときも真っ直ぐな天瀬に……惹かれてたんだ。

そう認めたら、どこかスッキリしたように感じて。
素直になれ、俺。

そう思うと、自然と足が動いて天瀬の方に近づいていた。