「あ」


きっと今ご飯を食べ終わって教室に弁当箱を置きに来たんだろう。
俺を見て手を振る識に俺も目線で振り返す。


「一人で食べてたのか?」

「雪音と。弁当箱置いたらまた雪音のとこ行く」

「ふーん」


笑いながらそう言う識に、惚気かよとため息をつく。
でももうモヤッとする感情は浮かばない。
きっと、花染のことは吹っ切れてるから。


「陽乃ちゃんと食べればいいのに」

「はあ?なんで」

「別に〜」


会う度に天瀬の名前を出す識にイラッとする。
……てか、なんで名前で呼んでんだよ。接点ないくせに。

意味もわからずイラついて軽く睨んだ……その時だった。


「あ!いた、春哉くん……!」

「え……花染?」


識の後ろから、焦ったように走って俺の名前を呼ぶ花染に驚く。
識も目を見開いて振り返った。


「あれ……!」

「え?」

「あれって…っ、陽乃ちゃんじゃない……っ?」