あれは……。

こっちに用があるのか歩いてきている女が、視線をズラすとパチッと目が合って。


「あ!」


明らかに俺を見て目を見開いた女。
そのまま俺の方に向かって軽く走ってきて、やばいと少し焦る。


「春哉先輩……!」

「……天瀬」


俺の名前を呼んだ目の前にいる天瀬に、識は驚いたような顔をした。

天瀬の表情は朝とは違う、どこか申し訳なさそうな顔をしていて。


「春哉先輩ごめんなさい!」

「は?」

「私、春哉先輩が女の子嫌いって知らなくて!!クラスの子に教えてもらったんです!」

「……」

「でも確かに言われてみれば春哉先輩冷たかったから納得しました!もうほんとに、あんな馴れ馴れしくしたら嫌ですよね!?悪気はないんですー!!」


天瀬の言葉と行動に、ポカンとしてしまう。

だって……俺が女嫌いって知ったわりには、態度が変わらない。
話し方も、距離感も、全部。