ただ純粋に助けてほしい、という感情が読み取れた。


はぁ、とため息をついて歩き出すと、やったー!という声が聞こえてくる。

そして当たり前のように俺の隣に来る女。


「あの、名前なんて言うんですか!」

「……」

「なーまーえ!」

「……日野春哉」

「何年生ですか?」

「…二年」

「春哉先輩っ!」


無視してもくじけないのか、あまりにもしつこい。
俺が答えなかったら横から俺の顔を覗き込んできて、答えるとパアアっと顔を明るくして笑う。

本当になんなんだこいつは……調子が狂う。

いつもなら、冷たく突き放せるのに。
なんでできないんだ。


「春哉先輩ってぶっちゃけモテますよね?」

「……」

「ですよね〜!」

「……声でかい」

「えっ喋った!」

「…うるさい」


俺が口を開かなくても、ずっと喋ってる……。
それに、声がでかいと言った直後の驚いた声が一番でかい。