これまで轟音のようにザアザアと聞こえていた雨音が、籠ったようなボツボツとした音に変わった。



まるで傘をさしている時のようだ。




実際に、私は誰かに傘をさされていた。



後ろを振り返ると、私より身長が1.5倍ほど高い男が私を見下ろすように立っていた。

今流行りのセンター分けにした艶のある黒髪に、キリッと開かれた大きな目。

この人、私の知り合い、?

いやいやそんな筈は無い。どうしてそんな考えになるのだろう。

首には何やら見たことの無い形のネックレスがしてあった。銃のような形をしている。


「え、えっと、」

モヤモヤとした気持ちを紛らわすかのように、私は男の方を見つめた。

そして、傘をさしてくれたことに感謝をするべきなのか、叫んで逃げ出すべきなのかが分からなかった。

そんな私を見ると、男はその口を開いた。

「着いてこい。」

男はそう言うと、腰にかけた小さなバッグから拳銃を取り出した。

私は小さく悲鳴をあげ、何度も首を縦に振った。

__殺される。

死ぬのなら、もう少しマシな場所で死んでしまいたい。

すると男は小さく微笑むと、拳銃をしまい、私の片腕を掴んで近くのワンボックスカーへ乗せられた。

これは誘拐だろうか。助け舟だろうか。
拳銃を向け脅してきた点については誘拐と言えそうだが、私の今の状況を救ってもくれた。__

いや、今はそんなことを考えている暇などない。



何だか、頭がボーッとするなぁ。