入学式から昨日まで、ユノの目はずっとわたしに向いていた。

あからさまに避けていたときも、気にせず声をかけてくれて……。

困ったときはいつも助けてくれた。

伝わっていたの、ユノの気持ち。わたしのこと本当に好きなんだな、って。

だから、裏切られた気持ちにもなってしまう。

せっかくの文化祭なのにエイミーとずっと一緒で、全然、わたしを見てなくて……。

「まぁ……オレも、今日のユノにはがっかりしたけど」

こんな気持ちはわかってもらえないと思ってた。

けれど、鮎川は一歩、二歩と近づいてきて、うつむくわたしの頭をぽんと撫でる。

顔を上げると視線が重なった。

真剣な顔の鮎川は、わずかな間を置いて目をそらす。

「……一緒に行くか?」

「え?」

突然の言葉にポカンとしていたら、鮎川は頭をガシガシかいて、言葉を付け足してくる。

「だから、その、他にいないなら……」

「果歩ちゃん!!」

鮎川の声をさえぎった叫び。

びっくりして声がしたほうへ向くと、曲がり角の陰から現れたユノがこっちへ駆けてくる。
突然すぎて戸惑うわたし。

すると、そばにきた彼は、黙ってわたしの腕を引っ張った。

ふわっと抱きしめられ、胸がとくんと高鳴る。

「ユ、ユノ……」

「ごめんね……立ち聞きしてた」

え……立ち聞き?

「エイミーはただの友だちなんだ。だから、オレ……友だちだからなんとも思ってなくて」

うそ……さっきの言葉、聞かれてた?

感情的になっていた自分を思い出そうとしても、驚きのほうが強くて、頭の中はもう真っ白。