テキトーに走り、ひと気のない廊下の隅で立ち止まる。
窓から見える中庭を見て、板が倒れた日のことを思い出した。
体を張って守ってくれた彼……。
「もうやだ」
サイテーだ、わたし。
小さくため息をこぼしたとき、背後で足音がした。
「お前さ……昨日、“太ってることはもう気にしてない”って言ってなかったか?」
……鮎川。
「あんな言い方して……」
「本当に気にしてなかったもん」
あれはイライラした勢いで言ってしまった言葉。
本当に、今のわたしはもう体型を気にしてはいないの。
「体型のことを言ったのは悪かったけど、でも……ユノだって」
「……」
「わたしのこと好きだって言いながら、他の女の子を学校に連れてきたんだよ?」
エイミーにお姫さま抱っこをするユノを見て、同じようにされて赤面した昨日の自分をもみ消したくなった。
ユノのために、ってクジを抜いていた自分をバカに感じたの。
「お姫さま抱っことか、フツーするかな? 好きな子の目の前ですること?」
「……山咲」
「英語でずっと喋ってるんだよ? ここは日本なのに!」
わかんない、ユノが。
全然わかんないよ……。