3時を回ると、終盤に入ったせいか客足も遠のく。

わたしたちは少しずつ使わなくなったものを片付けながら、お客さんの相手。

「カホ!」

ゴミを集めていると、背後から声がした。

振り向くと、エイミーは両手を後ろで組んで、わたしの作業を覗いてくる。
「……」

持っている赤い風船をチラリと見て、さっき耳にした言葉を思い出す。

“コウテクレタ、シューサク、フーセン”

彼女は見せびらかすようにして、周りに話していた。

「何?」とたずねたら、エイミーはにこりと微笑む。

「シューサク、スキ?」

「……え」

何、突然……。

「シューサク、カホスキ」

「……」

「カホ、ドナイヤネン」

挑戦的な目つき。

わたしは返事に迷い、言葉を詰まらせた。

と、そのとき、

「エイミー!」

廊下にいたユノが慌てて走ってくる。

同時に、

「山咲、これも……」

鮎川も紙くずを持ってそばに来た。

「あ、ここに入れて」

「おう」

エイミーから目を離したわたしは、鮎川に向かってゴミ袋を広げ、紙くずを入れさせる。

わたしと鮎川の様子をじっと見ていたエイミーは、しばらくしてクスッと笑みをこぼした。

「オニアイ」

囁かれたわたしは、ゴミ袋をグッと握り締め、苛立ちを抑える。

だけど、イライラが止まらなくて、

「そっちもお似合いだよ」

張り合うような態度で言い返してしまった。

「果歩ちゃ……」

「よかったね、ユノ」

……ムカつく。

“アメリカにいたときさ……よく空を見上げて、果歩ちゃんのことを考えてた”

あんなの嘘だ……。

「そんな体型でも美人に好かれてラッキーじゃん!」

勢いで言ってしまったとはいえ、体型って言葉を口にしたとき、「あ……」と後悔した。

案の定、ユノの表情は一瞬で暗くなる。
けれどもう、そこまで言ったら止められなかった。

「ふたりで参加すれば? 後夜祭!」

「あ……山咲!」

鮎川の声を振り切って、教室を飛び出す。

走りながら「なんで」とつぶやいた。

なんでまた、傷つけるような言葉を言ってしまったんだろう。

わたし、最近は嫌な子じゃなかったはずなのに。