「大胆な性格の女の子だったね」
教室に戻る中、しずちゃんはあの子の話をしてきた。
「ユノくんって結構モテるんだなぁ」
「……そうみたいだね」
昨日耳にした話では、夏休みで日本に来たらしい。
あの様子からして、ユノに逢いにきたんだと思う。
「まぁ、そんなにプリプリしなくても……」
「プリプリなんてしてないし!」
誤解されたくないから声も大きくなる。
ムッとしたままでいると、しずちゃんはチラッとよそを見た。
「ほら、ユノくん来たよ」
言われて廊下の奥を見てみると、走ってくる彼がいた。
「ごめんね、果歩ちゃん!」
「……何が?」
そばにきて、開口いちばんに謝ってきた彼。
わたしはそっぽを向く。何とも思っていないフリで。
「いや……エイミーが……」
「ああ、キライって言ってきたこと? 別に気にしてないよ」
どうでもいいことのように返す。
ユノはわたしの顔色をうかがいながらも「ならよかった」とつぶやき、表情をパッと明るく切り替えた。
「果歩ちゃん、最後のダン……」
「ユノー!」
ユノは何かを言いかけていた。
けれど、
「エイミーちゃんがお呼びだぞー!」
教室から顔を出した男子たちが声をかけてきて、ユノの視線はわたしから彼らへと移る。
「……行こ、しずちゃん」
「え、でも……」
しずちゃんは“まだ話の途中じゃないの”と言うかのように、ここから動こうとしない。
だから、その腕を強く引っ張り、ユノに背を向ける。
慌てて「果歩ちゃん」と呼びとめてくるユノ。
わたしは振り向くのも嫌で、その声を無視したの。