「……手伝う」

「え?」

「わたしもさっき、ユノの腕に気づいたの」

隣に腰を下ろし、転がっているクジに手を伸ばす。

“こういう地味な作業って肩こるよねぇ”

クジを作ってくれた子たちを思い出した。

相談もせずにこんなことをして。そう申し訳なく思う気持ちもわいてくる。

でも、このまま進めたら……明日、ユノは……。

「大丈夫なのかな。腕……」

四つ折りのクジをひとつひとつ開きながら、不安な気持ちを声にした。

静かに聞く鮎川が、しばらくしてから独り言のようにつぶやく。

「お前……最近、変わったよな」

「ん?」

首を傾げると、鮎川はそんなわたしの顔をじっと見つめ、しばらくしてから視線をそらす。

「さっきも、ユノを選んでたし」

「……あー」

何の話かと思ったら、お姫さま抱っこのことを言ってるんだね。

「鮎川のおかげ」

「……」

「あれから見る目が変わったっていうか……太ってることも気にならなくなったの」

ユノはユノ。体つきが変わってもそれに負けない彼は、やっぱりかっこいい。

単純だな、って自分でも呆れるけれど、あの話を聞いてよかったと思ってる。
「ありがとね! 話してくれて!」

素直に感謝した。

けれど、鮎川はなぜか眉を寄せ……。

「手が止まってる。そんなんじゃ、いつまで経っても終わんねぇぞ」

ブスッとした声でこの話を終わらせてくる。

それから1時間くらい経ち、

「よし、終わろう」

鮎川はクジが30枚集まった時点でストップをかけてきた。

「え、60枚全部じゃないの?」

「ユノだって参加したいだろうし。つらそうだったら代わるつもりだから、こんくらいでいいよ」

そっか、鮎川はみんなと同じ分量にするつもりで……。

「さっさと片付けようぜ」

「……うん」

帰る頃、外はもう薄暗かった。

明日の彼を心配する気持ちはある。でもきっと、鮎川がなんとかしてくれる。

そう思って、わたしは安心した気持ちで帰ることができたんだ。