それから数日が経ち、毎日少しずつ進めていた文化祭の準備も完了した。

「果歩ちゃん、ちょっと来て!」

出来上がった衣装を手に取っていたとき、マミちゃんたちが声をかけてきた。

なんだろう、と首を傾げながらそばへ行くと、

「はい! 引いて!」

明日使う予定のクジの箱を差し出される。

「え? なんで……」

きょとんとするわたしに、マミちゃんはにっこり。

「ここ数週間でいちばん頑張ったのは果歩ちゃんだよねって話になって……そのお礼!」

「みんなからのご褒美だよ。引いてみたら?」

隣に来たしずちゃんが背中をぽんっと押してくる。

「うそ……」

好きなことだから大変に感じてはいなかったけれど、みんなの気持ちが嬉しい……。

わたしはうるうると泣きそうになりながら、箱の中に手を入れてみた。

「ああ~。やっぱりそれかぁ!」

「だね。目玉のシーンだし、クジの数もいちばん多いもんね」

人気マンガのタイトルと、演じるシーンのページ数が書かれているクジ。
それはユノたちが担当する“お姫さま抱っこ”のシーンだった。

予想通りというかのようにマミちゃんたちはキャハキャハ笑っている。

「お相手はどちらになさいますか? “主人公さま”!」

マミちゃんはお客さん向けの言葉を口にしながら、前に並んだふたりを手で示す。

待ち構えていたのは、横に大きいユノと縦に長い鮎川だった。

「……選ぶの?」

「もちろん!」

当日のように、すでに相手が決まっている状態のほうがよかった。

みんなの前で「この人で」と選ぶのは、恥ずかしい。

なかなか答えられないわたし。

けれど、心はもう誰を選ぶか決めていた。

「ユ……ユノ、かな」

口にした瞬間、顔がカーッと熱くなる。

隣を見ると、しずちゃんがニヤッと笑った。

「あ、ちがうよっ……そういう意味じゃなくて。こ、この前……助けてくれたし……いつも、助けてくれるし」

誤解されないよう急いで理由を言っても、「はいはい」と聞き流される。

「違うってば」とムキになったとき、

「っ、えっ!」

突然、足が浮いた。