「話そうとしたら、毎回、果歩は自分の話をし始めるんだもん」

「……え」

ぽかん、と口を開けてしまう。

「気づいてないのかもしれないけど……あんた、よくわたしの話をスルーするから」

「……う、うそっ」

「ホント。付き合ったときも一応、報告はしたよ……でもあんた、そのときユノくんから届いたハガキを見せてきて、まったく聞いてなかったよね」

「ええっ」

「確かに、別れる前は話そうともしてなかったよ。でもそれは、付き合っていることから言わなくちゃいけないのが面倒くさかったからで……」

「……」

「頼りないとは思ってないから」

呆れた口調のしずちゃん。

報告もされていたことを知って、わたしは言葉を失う。

すると、彼女は一点を見つめ、

「けど、面倒くさいってのは言い訳かも……別れる前は、あんたと沢部を重ねて見ることも増えていたから」

「重ねてって……」

表情をゆがめて聞き返すと、しずちゃんは間を置き、うんとうなずく。

「わたしたちが付き合ったのは中3の春でね……」
「そ、そんな前から!?」

「うん。でも、デートっていうデートはしてこなかったよ。たまに生徒会室で一緒に勉強をする感じ」

「……勉強、ですか」

「つまらないでしょ? 向こうは好きじゃなかったのよ、わたしのこと」

しずちゃんは苦笑いを浮かべた。

「ケンカが増えはじめたのは、進路が決まった頃。わたしが“この学校を受験する”って言った瞬間、彼の態度は一変したの」

「なんで?」

「“そんなバカが通うような高校はやめてくれ”って言われたの」

「……バカ?」

「彼はね、成績がいい女だから付き合ってくれていただけなの。あー……ちがうな。自分より頭のいい女を下に置きたかった、が正解かも」

「何それ……」

確かに、しずちゃんは頭がいい。

テストの結果は毎回、学年で5位以内に入っていたし、狙おうとすればもっと上の高校にも行けたとは思うけど……。