「大丈夫か!」

先生はこの場についてすぐに、座ったままのユノに目を向ける。

「倒れたのはこの板です。で、一緒に転んだのはそっちの子」

元の位置に戻した板と、ユノのそばにいるわたしを指差す生徒。

「キミか……怪我は?」

「あ……わたしは大丈夫です」

返事をすると、先生は安心したのか、ふうと長めに息をつく。でも、またすぐに深刻な表情をして、ユノのそばでしゃがんだ。

「どこが痛い?」

「あ……平気ですよ。ただのかすり傷なんで」

「いや。一度、病院で診てもらったほうがいい」

いつの間にか、辺りは人だかり。

近くで作業をする生徒たちがぞろぞろと集まってきてる。

「立てるか?」

「はい……」

この時間、保険医はもう帰っている。

今から病院まで行き、傷の手当てをすることになったユノ。

彼は足を引きずりながら、先生と駐車場のほうへ歩いてく。
ひとり残ったわたしは地面に落としたままのカバンに手を伸ばす。

するとそのとき、背後の話し声が耳に入ってきた。

「何かあったの?」

「あー、さっきあの板が倒れたんだけどさ……」

一連の流れを知っている生徒が、後から来た人に状況を説明している。

「下敷きになる女の子をかばおうとして、一度は手で抑えていたみたいなんだけど……アレ、相当な重さでしょ? 抑えきれずそのまま倒れたんだって」

「ええ!」

「周りが慌てて板を戻したし、男の子がクッションになったおかげで女の子のほうはたいしたことないみたいだけど、完全に下敷きになっていたらしいから……骨折とかしてるかも」

……え。

「そ、それ本当ですか!?」

耳を疑い、思わず会話の中に入ってしまった。