「はぁっ、はぁっ……ユノ」


校門のそばまで行き、走って乱れた息を整えながら周りを見回す。


「どこ……どこにいるの? …………あっ!」


見つけた。

自転車置き場の桜の木の下にいる男の子……あれ、絶対ユノだ。

すらりとした後ろ姿、色素の薄い茶色の猫っ毛。顔を見なくたってわかる。だって、見つけた瞬間から、視界の端にある校舎が大聖堂のように変わったから!

一歩、二歩、と近づく。

胸がグッと苦しくなるのを押し切って、声を張り上げた。


「ユノ!」


ああ……スローモーションだ。振り返る様子がゆっくりになったよ。


「やっと逢え……」

「ん? “ユノ”?」

「…………あれ?」


振り向いた彼と目が合う。でも、その顔は予想していたものとはずいぶんかけ離れている。

よく見ると髪の色も自然な茶色じゃない……。


「あっ、すみません! 間違えました!」


ユノじゃないと気がつき、慌ててそばを離れようとしたんだけど、


「ええっ、ちょっと待ってよ~。ユノって何? 気になるじゃ~ん!」


腕をガシッと掴まれてしまった。


「ちょっ、何すん……」

「キミ、どこ中? あ、顔も結構かわいい~!」

「やっ……離してください!」

「ねぇ、名前はなんていうの?」

「もう離してってば! っ、痛い……」


何この人、力が強くて全然ふりほどけない!


チャラチャラした態度で距離を詰めてくる彼。

助けを求めようと周りに目を向けたけれど、知ってる顔はひとつもなくて。


「あ、スマホ持ってるよね? 連絡先、交換しようよ~」

「嫌ですっ」


早くユノを探したい……。

こんなことをしている暇なんてないのに!


苛立ちがどんどん募る。こうなったら先生を呼ぶしかない、と大声を出そうとした。

けれどその次の瞬間、