「あんな荷物を抱えて、旅館との間を何往復もするヤツなんて、そうそういねぇぞ」

「……だね」

鮎川の言う通りだ。

ユノはちゃんと、普段から運動もしてるんだ……。

「山咲」

「……ん?」

「このまま帰んの?」

試すような口ぶりだった。

言葉を詰まらせていると、鮎川はもうひと言、ため息まじりに付け足す。

「知らなかったこともあるだろうから、お前を完全な悪者にする気はねぇけどさ。あの言葉……きつかったと思うよ」

……ユノはどんな気持ちになったんだろう。

“少しはダイエットしたら!?”

ホント、わたしはやなヤツだ。

「……戻る」

そう言ってリンゴジュースを飲み干すと、鮎川はホッとした顔で笑った。

ハンバーガーショップに戻るまでの間……。

「小学生んときのアイツは何でもできて、見た目もよくて……あの頃から人気者だったけどさ、オレは今のアイツのほうが好きだな」

隣に並んだ鮎川は独り言のようにつぶやいていた。

「太ってるオレにアイツは言った。ボクは太っても食べるよ、って……みんなを悲しませたくないから食べる、姿が変わっても気にしない、って言い切ってて……」

わたしの知らないユノの話……。

「あのときのオレは……まだ太ってないからそんなふうに思えるんだよ、ってひねくれた考えでその言葉を聞いてたんだよ」

太り始めた頃、ユノはどんな気持ちで鏡の前に立っていたのかな。

想像したら胸がグッと締め付けられた。

「でも、アイツは今も毎日笑ってる……体型以外は何も変わってねぇんだ。……オレはそこにたどり着く前に身長が伸びて、デブから解放された。だから、変化をちゃんと受け入れてるアイツを……かっこいいなって思う」

簡単に受け入れられたわけではないんだろう。

もし自分がそんな体質だったら……わたしも、ユノのお姉さんのようになっているかもしれない。