「ユノの親、見たことある?」
……親?
「仕事で忙しいみたいだから、授業参観に来てたのはじいちゃんとばあちゃんだったし、知らないやつのほうが多いと思うけど」
「……うん。知らないかも」
言われてみると、見たことないな。住んでいた家は知っているけれど。
「鮎川はあるの?」
「ある。写真で」
へぇ……ユノの両親ってどんな感じだろ。
ユノ自体がハーフっぽい顔だし、きっと、お父さんとお母さんのどちらかは外国人のような顔立ちなんだろうな。
想像をめぐらせていると、鮎川がぼそりとつぶやく。
「親はふたりとも、今のアイツと同じ体型だよ」
「……え」
耳を疑った。
「ちなみに、歳の離れた姉ちゃんがふたりいるんだけど、その姉ちゃんらもあんな体型」
「うそ……」
「ホント」
家族みんな太ってるってこと……?
「遺伝らしいよ、あれは」
「え、でも……小学生んとき、ユノは細かったよ?」
「成長期頃から太ってく体質なんだってさ」
……そんなの、初耳。
小学生のときはユノと話す機会が結構あったけど、そんな話は聞いたことがない。
「オレもさ、小学生んときデブってたじゃん?」
「え……そうだった?」
小学生時代を振り返る。
「そういえば……そうだったかも?」
なんとなく覚えてはいるんだけれど……。
「まぁいいよ。あんときは今みたいに喋ってなかったし、それにお前は……アイツしか見てなかったろ」
「……」
すみません。本当は全く記憶に残っていない。
「オレ、学年でいちばんデブだったんだよ。安井たちからからかわれたり、女子からもキモがられてた」
「えー? うそ……そんなの、全然……」
安井という男子がいたことや、そいつが人をからかうような性格をしていたってことは覚えてる。
でも、鮎川を気持ち悪いと思ったことは一度もなかった……はず。