「俺も同じクラス」
後ろの高いところから聞き慣れた声が降ってきた。
「鮎川!」
「よう。また1年間よろしくな」
振り向くと、そこに立っていたのは身長180センチ越えの同級生、鮎川(あゆかわ)春樹(はるき)。
小中と学校が一緒だったんだけど、まさか、高校も一緒になるなんて……。
しずちゃんはクスッと笑い、何かを見透かしたような口ぶりで言う。
「へぇ。やっぱ、あんたもここを受けてたんだ?」
「っ……べ、別に。……ユノがここを受けるって言ってたから」
問いかけられた鮎川はきょろきょろと目を泳がせていた。
その様子も気にはなるけれど、ユノという名前が出てきたことのほうが驚きだった。わたしは小学生時代を振り返り、ユノと仲が良かった男の子を思い出す。
「……ああ、そういえば鮎川も仲がよかったんだっけ。この3年間は連絡をとってたの?」
「ま―な。たまに手紙を送り合ってはいたけど。さっきも校門のほうで一緒にいて……」
「えっ!?」
鮎川の指差す方向に急いで視線を移す。
「校門だね! 行ってくる!」
「あ、ちょっ……果歩ぉ!?」
気がついたら足はもう走り出していた。
しずちゃんの声にも振り返る余裕がないくらい、頭の中はユノでいっぱいになっていき……。
◇ ◇ ◇
“あえるよ、ぜったい! だからバイバイはしない!”
この3年間、何度も何度も頭の中でリピートしてきた声。
◇ ◇ ◇
本当のことを言うとね、もう逢えないような気もしていた。
大丈夫。絶対にまた逢える。そう信じる気持ちと、このままずっと手紙のやり取りだけをする関係なのかもしれないな、って諦めかける気持ちが交代でやってきてたの……。
だからね、帰国すると聞いてからも「これは夢なんじゃないか」とよく不安になっていた。「また逢える」って喜びながらも、頭の隅っこで「やっぱり帰れない」って言われたときのことも考えているような感じで。
でも、これは夢じゃないんだよね……もうそこに、そこにユノがいるっ!