「お湯、もう沸騰してるよ~」

周りの反応など気にも留めず、気が抜けるような声で穏やかに言った。

そして、高い位置からパラパラと、鍋に少量の塩を降り落とす。

肩透かしを食らってあ然とするわたしたち。

「っ、なんだよユノ! てっきりその塩を全部ばら巻くのかと思ったぜ!」

「オレもー! 土俵に立った相撲取りに見えた!」

クラスメイトたちの笑い声が飛び交う。

「っていうか、ユノって何でもできるんだな!」

「普段から料理してるのか?」

わたしはもう自分の作業に戻っていた。

でも、耳はユノたちの会話に向いている。

「パスタはよく、おやつで作るから」

……おやつ?

腰を曲げて火加減を見ていたんだけど、思わず口元が引きつった。

「ぶっ! パスタがおやつかよ!」

「うん、簡単に作れるからね~」

「やっべぇ。笑いすぎて腹痛ぇ!」

ただのクラスメイトからすれば、ネタになる面白い話。

でも、彼を男の子として見ようとしているわたしには、全然笑えない話だった。

クラスのみんながゲラゲラ笑う中、わたしは鍋の取っ手を強く握り、ユノへの不満をこらえる。