激しく横揺れした針がピタリと止まった。
「……マジか」
歯ブラシをくわえたまま、がくんと肩を落とす。
先端が示す数字はここ数日の自分の甘さを表していた。
◇ ◇ ◇
「太った? ……そうは見えないけど」
「2キロ。この前計ったときは1キロやせてたのに……」
休憩時間、朝からゆううつな気分のわたしは終わった科目のノートを片付けて、ため息をつく。
家庭科の準備を済ませてそばにきたしずちゃんは「たった2キロでしょ」と鼻で笑った。
「しずちゃんはスタイルがいいもん。2キロはデカいよ……はぁ、ダイエットしなくちゃ……」
「でも今から調理実習だよ? あんたカルボナーラ好きじゃなかったっけ?」
「……」
「食べないで残すつもり?」
「……食べるけど」
もう、しずちゃんは意地悪だ。
わたしの返事をクスクス笑って「ほら行くよ」と腕を引っ張ってくる。
うなだれながらも席を立ったとき、
「ユノ、一緒に行こうぜ!」
数人の男子が横を通り過ぎ、ななめ後ろの席に集まってく。
「すっかり人気者だね、ユノくん」
「うん……」
宿泊オリエンテーションでは実行委員の仕事をテキパキこなし、旅館で他の宿泊客からお相撲さんに間違われ、みんなの笑いを取ったユノ。
鮎川(あゆかわ)と仲がいいのかふたりでいるところをよく見かけるけれど、最近は他の男子たちも彼を囲んでいる。小学生時代とまったく同じ状況だ。