「……」
ユノはなぜか驚くような表情で、わたしの顔をじっと見つめてくる。
「な、何かついてる?」
変に思って自分の頬を触ると、ユノはハッと我に返る。
「……ごめ、何もついてないよ。ちょっと昔とかぶって……」
「昔?」
「あ、ううん! なんでもない!」
詳しく聞こうとしても、ユノは誤魔化して「昔」について話そうとはしない。
そんな様子に首を傾げていたら、
「オレこそごめんね」
今度は、逆に謝られてしまった。
「アメリカにいたときさ……よく空を見上げて、果歩ちゃんのことを考えてた」
「……ユノ」
「何度も“逢いたい”って思ってたから、再会できて……嬉しくて。でも浮かれすぎだったね……反省した」
情けなさそうな顔……。
いつも微笑んでいるユノの、苦笑い。
「あのさ……果歩ちゃん」
「……ん?」
何を言われるのかと思っていたら、
「好きな人っているの?」
ユノはこれまでとは違う控えめな態度でたずねてくる。
「……いない、けど」
「じゃ、好きでいてもいいかな?」
戸惑いながら答えると、すぐさま次の質問が飛んできた。
「……」
「ダメ……?」
全部、聞かれているんだろう。背後であの子たちが笑っている。
だけど、今はなぜか、そんな声に対しても嫌な気持ちにはならない。
「……ダメじゃないけど」
「ホントに?」
「……うん」
「っ、やったぁ!」
ただただ目を奪われていた。一喜一憂する目の前の彼に。