「可哀想なのはユノくんのほう」
しずちゃんは苛立った声で言った。
振り向くと彼女は、
「離れていた間に勝手な想像されて、再会したら冷たい態度。それでも怒らず“果歩ちゃん果歩ちゃん”って声をかけてくれるのに……果歩のほうはずっと人目を気にして文句ばっか。全然、ユノくん自身を見ようとはしないよね? 嫌ならハッキリそう言えばいいじゃん。言わないでわたしに愚痴るのは間違ってない?」
険しい顔で、ズラズラズラッと言葉を並べてくる。
「しずちゃん……」
「悪いけど」
「……」
「そういう愚痴はもう聞きたくない」
これまでは……どんなに小さな悩みでも、しずちゃんはちゃんと最後まで聞いてくれた。
嫌な顔をせず、「あんたバカだね」って呆れながらも、お姉さんのようにアドバイスしてくれて。
けれど今、目の前にいるしずちゃんは……うんざりした態度で突き放してくる。
わたしを見ないその表情は、怒っていると言うより……何かに苦しんでいるようだった。