親の転勤でアメリカに引っ越してしまった彼は、小1のときから誰よりもいちばん輝いていた。

純日本人なのに肌は透き通るように白くて、ハーフみたいな顔立ちだったから、そこに立っているだけで景色は一瞬で洋風に一変する。神社の鳥居でさえもパリの凱旋門に見えてしまうこともあった。

テストもほとんど100点ばかり。運動神経も良くて何でも簡単にこなしちゃうから、みんなからは「王子、王子」って呼ばれてたんだよね……。

そんな彼とわたしは両思いだった。ライバルが多いから諦めていたのに、ユノはわたしを好きになってくれたんだ。


◇ ◇ ◇



「ああ、どうしよう。アイドルみたいになってたら……想像するだけでドキドキしちゃう!」

「果歩って結構、プラス思考だよね」

「たぶんね、目と目が合った瞬間にわたしとユノの時間だけピタッて止まるの! こう見つめ合ったまま……」

「はぁ。また始まった」
思い浮かべたのは、桜が舞い散る中で目と目が合うユノとわたしの姿。


「見つめ合って、わたしは目に涙を浮かべながら聞くんだぁ……“ユノ?”って。そしたらユノはね、切ない顔で微笑んで、わたしの腕をグイッと引っ張るの!」


ユノになったつもりで引き寄せるふり。

そのあと、自分に戻って抱きしめられるふり。


「“逢いたかったよ、果歩。もう、離さないから”……とか言われたりして! きゃあああっ!」

「……はぁ。すぐ少女マンガの主人公になりたがる」

「でねっ、でねっ、ぎゅうっと抱きしめてくるから、わたし“く……苦しいよ”って言っちゃうの!」

「なんでセリフのとき声変えるの……」

「そしたらね、ユノが“ダメ、ずっとこうしたかったんだから。オレから離れるの禁止”って顔も近づけてきてー!! いやぁぁあっ!!」

「はいはい、わかったから。ほら、もう放ってくよ?」


しずちゃんに腕を引っ張られながら思い描く、感動の再会シーン。

はぁ……本当に夢みたいだよ。今日からまた毎日顔を合わせるようになるだなんて……。