目立つか目立たないかで言えば、目立たないほう。

できるかできないかで言えば、できることもあるけどできないことのほうが多い。

そんなわたしだからね、こういうのは向いてないと思うんだ。

「山咲(やまざき)ぃ! 山咲(やまざき)果歩(かほ)はどこだぁ!」

高速インターで15分のトイレ休憩。

さっきお茶を飲みすぎたから早く行きたいのに、先生の探す声に気付いて足を止める。

「……で、山咲は休憩が終わったら全員をバスに乗せて人数確認!」

「はい」

「勝手に座席を替えた生徒がいないか、このプリントでチェックもしておくこと」

「わかりました」

「それと、この後の予定だが……」

4月の半ば、わたしたち1年生は今日から宿泊オリエンテーション。

親睦を深めることを目的としたこの行事で、わたしは実行委員になってしまった。

「……はぁ。やっと」

「大変だねぇ、実行委員さんは」

先生が去ったあと、離れた場所で待ってくれていたしずちゃんはクスクス笑ってる。

「こういうのホント苦手。なんであのときグーを出しちゃったんだろ」

トイレにはもう長い行列ができていて、ゆっくりする時間はないってことを悟った。

「こういうのは無縁だと思ってたのに……ジャンケンで決めるとか」

「あのときは笑った。8人でジャンケンしてひとりだけグーを出すなんて……やろうとしてもできることじゃないよ、あんなの」

他人事だと思って、しずちゃんは大笑い。

「このわたしが実行委員だなんて。どちらかといえばしずちゃんのほうが向いてるのに……ねぇ、今からでも代わって?」

「勘弁。高校ではもう委員なんてしないから」

「むぅ……」

「それに彼だって、一緒にする相手がわたしだと気に入らないはずだよ?」

中学時代にクラス委員や生徒会にまで入っていた彼女はそう言い、フードコートを指差す。

そこにいるのは、焼きそばを食べているユノだった。

「……」

「彼はこういう委員とか慣れてそうだね」

「まぁ……小学生のときはずっとクラス委員だったし」

ユノは女子の実行委員がわたしだとわかった瞬間、男子の実行委員はもう決まっていたのに、みんなの前で「自分がやりたい」と言いはじめたんだよね……。

「よかったじゃん、いいパートナーで」

しずちゃんは冷やかすようにそう言って、空いた個室に入る。

まだ列に並んだままのわたしは、目が合い手を振ってくる彼に苦笑い。