「胃袋ってなかなか小さくならないね! ……全部は無理だと思ってたんだけどなぁ!」

眉を下げ、悔しそうに笑うユノ。完食したことを情けなく思っているみたい。

「ペロッと食べちゃえる自分にびっくりした! ……ダメだね、ホント!」

笑ってはいるけれど、さっきから自虐的なことばかり……。

そんなユノにかける言葉が見つからず、わたしは静かにうつむく。

すると、ユノは歩くのをやめ、「果歩ちゃん」と声をかけてきた。

振り向いたわたしを、真面目な表情で見つめてくる。

「必ず……痩せてみせるから」

本当は悲しいはずなのに。

さっきも……特進との問題が解決して、普通科の子たちからお礼を言われたときも、ユノは明るく振る舞っていた。

愚痴りたくなるほど悔しいはずなんだ。なのに、今もユノは笑って……。

「目標体重はあと3キロ! ……と言っても、さっきのでまた太っちゃうかもしれないけど! でもオレ……」

前向きに考えるのはいいことだと思うけど、

「……待てないよ」

空元気な言葉はもう聞きたくなかった。

ユノの声をさえぎった瞬間、視界がじんわりと涙で滲む。
「え……?」

「もう待てない。だって……もう体型とかどうでもいいもん!」

しんとした廊下。この声はきっと、いちばん奥まで響いたはずだ。

ユノは叫んだわたしにびっくりして、口をぽかんと開けている。

その表情を見つめ、声を張り上げた。

「……好きです」

言った瞬間、顔が一気に熱くなる。

……再会した頃は、小学生時代に戻りたくて仕方がなかった。

でも今は、もう戻りたいとは思わない。

“あの頃のユノ”も好きだけど、わたしの中は“今のユノ”でいっぱいだから……。

「あ、えっとハンカチ……ちょっと待って、ハンカチ……」

涙ぐんだわたしに焦りだすユノ。

今のわたしじゃ、まだこの人には釣り合わないのかもしれない。

でも、弱音を吐ける相手になりたい。平気そうに振る舞う姿を見て、強くそう思った。

「だ……大丈夫だよ。自分のハンカチ使うからっ」

慌てる姿が面白くて笑ってしまったけれど、笑うと涙もどんどん溢れてきて……。

泣いてしまったことで、わたしの告白はそのまま流れてしまい、ユノが告白されたことに気づくのには時間がかかった。