「なんでユノを目の敵にするんですか!」

まともに話が通じる相手じゃないとわかっていても、黙ってはいられなかった。
たずねると、先輩は笑みを浮かべたまま返してくる。「僕は醜いモノが嫌いだからね」と。

「ユノはもう十分痩せてます! 醜くなんか……」

「恥をかかされるまで行動に移せなかっただろ?」

わたしの声をさえぎる先輩は、厳しい顔つきになった。

「彼もアメリカにいたなら知ってるはずだ。デブは出世できない。……僕はグローバルな会社の跡取り息子だから、自己管理は幼い頃から教育されてきた。……だから彼のような甘ったれた考えの人間は大嫌いだ」

派手な手振りを付けて、ペラペラ、ペラペラ、と述べられる。

苛立ちが込み上げてきて、わたしは声を張り上げようとした。

けれど、そのとき……。

「これで太っても、オレはまたダイエットをしますよ」

ケーキを食べていたユノが手を止めて、こちらに向いた。……その表情はとても真剣で。

唇の周りは口に入り切らなかった生クリームがべっとりついている。

だらしなく見えるはずのその顔を凛々しく感じた。

「こんくらい、どうってことないです」

ニコッと笑って、再びケーキを頬張るユノ。

先輩はその言葉を鼻で笑ったけれど、そこからのユノがすごかった。

ハンバーガーショップでのことを思い出すくらい、ユノの食べるペースはどんどん速くなり、5時間目を知らせるチャイムが鳴り始めた頃、見物していたみんなはドッと歓声を上げた。

そして5時間目が始まった今、わたしは胃薬を飲ませようと、ユノを連れて保健室へ向かっている。