“オレ、痩せたいんだ”

“意志が弱いから、果歩ちゃんと普通に話せる環境だと、また自分を甘やかしてしまうと思う。……だから、ちゃんと痩せるまで……オレ、果歩ちゃんから離れて過ごしたいんだ”
“かっこよくなって、果歩ちゃんを振り向かせたい”

……これまでの努力が水の泡になってしまう。

すっきりした輪郭、細くなった手足。……ぶかぶかになった制服。

今の姿を見つめると、鼻先がつんと痺れた。

次第に視界も歪み始め、自分が涙ぐんでいることにも気付く。

何も言わず、ひと口、ふた口、と生クリームを口に運ぶ彼。

隣でしずちゃんはため息をついている。

ユノの後ろにいる鮎川も悔しそうな表情をしていて……。

見物する生徒たちも言葉を失い、静かに場を眺めていた。

この状況を楽しんでいるのは、この人だけだ。

「タイム、プレイス、オケーション」

わたしに気付いた先輩が、両手でアルファベットのTとPとOを作りながらそばに来る。

「悪いけど、今キミの相手はできない。そんな瞳で見つめても……無、駄、だ、よ?」

目の前に来た先輩は、わたしの鼻をつつきながらウインク。

いつもの自分なら「またワケのわからないことを」と呆れ、相手にもしないだろう。

だけど今は、文句を言わなきゃ気が済まない。