「昨日の果歩ちゃん、元気がないように思えたから……取りに行ったんだ。カバンの中に入れてたからちょっと潰れちゃったけど」

「取りにって……隣町まで?」


わざわざ行ったのかと尋ねたら、ユノは優しい表情でうんとうなずいた。


「……」


元気がなかったわけじゃないよ。

わたしはただ、太ったユノを避けていただけ。


◇ ◇ ◇



“でも、あんたは見た目だけで好きになっていたわけじゃないんでしょ?”


ちょっとでも様子が変だと思ったら、それに気づいて元気づけようとしてくれる。
そういうところは今も変わってないんだな。


ユノの変わらない部分に触れたわたしは、しずちゃんの言葉を胸に……菜の花を受け取った。


「……おかえり、ユノ」


正直に言えば、まだ今の姿を受け入れられない自分がいる。でも、変わったのは見た目だけなのかも、と思う自分もいて。


「やっと笑顔見れた!」


こんな無邪気な顔を見たら、これ以上は避けられないよ……。


◇ ◇ ◇



結局、わたしはユノと一緒に帰ることにした。


「時間は大丈夫?」

「……うん」


アメリカでの生活や、帰国してからの時差ぼけの話。

走る気でいた彼とゆっくり話しながら歩いた道は、意外と楽しいものだった。

でも、

「フンッ」

電車の中、ユノは再び壁ドンをしてきた。

変な行動をとる彼に顔をしかめてしまう。


「フ―……フー……」


また興奮してる……。

さっきまで普通だったのに、なんで電車の中ではこうなの……。


真っ赤な顔と荒い鼻息。それにうんざりしたわたしは、もうハッキリ言おうと決意する。電車での壁ドンとひとりで興奮して暴走するところ。それさえなければ仲良くできると思ったの。

けれど口を開きかけたわたしは、ある状況を目にする。