あの小学校の卒業式からちょうど3年。高校生になったわたしとユノは、今日の入学式で再会を果たす。

「ねぇ、しずちゃん……わたし、この制服似合ってるかなぁ?」

「さぁ。似合ってるんじゃない?」

「あ、今テキトーに返したでしょー! ねぇ、本当のこと言って! 本当に似合ってる?」

「はぁ……今日の果歩はホント面倒くさいねー。制服なんだからそのうち嫌でも似合うようになるってば」


駅から学校までの道のりで、わたしはずっと手鏡に自分の姿を映していた。

こっちは真剣なのに簡単な返事で済ませたのは、中学で出会った親友の松本(まつもと)雫(しずく)。しずちゃん。

なんでもズバズバ言っちゃう遠慮のないタイプだけど、見た目どおり大人びた考え方を持っていて、同い年だけどお姉さんみたいな存在なの。


「で、その帰国した彼とは何時にどこで待ち合わせてるわけ?」


しずちゃんは話をもとに戻し、スマホで時間を見る。


「あ、そういうのは決めてないよ。エアメールには同じ高校に通うってことしか書いてなかったし」


そう返しながら、わたしはカバンの中に手を突っ込んだ。

引き出したのは1枚のポストカード。ユノから届いた最後のエアメールだ。


「また空の写真だったの?」

「うん! 今度は白い月が写ってる空だった!」
この3年間で届いたエアメールの数は42枚。

そのすべてが空の写真を使ったポストカードで、毎回、そこには数行のメッセージが書かれてある。

水面を通して写した清々しい空や、家々の影が印象的な赤い空。数色が複雑に混ざりあった夕方の空もあれば、星を沢山ちりばめたロマンチックな空まで……。

エアメールが届くたび、わたしはいつもあの卒業式で交わした言葉を思い出していたの。


「でもさぁ、あんた今の彼のことを知らないんでしょ? それってちょっと怖くない?」

「怖い?」


しずちゃんはなぜか不安そうな顔。


「なんで怖いの?」

「だって、中学んときの男子たちって一気に変わっていったじゃん? 身長も声も」

「うん」

「だからそのユノって人も小学生のときとはちがうはずだよ?」

「ああ、なんだ。そういう“怖い”か」


もう、しずちゃんったら。いきなり何を言い出すのかな、って焦ったよ。


「……うん。きっと変わってるだろうね」


絶対、もっと素敵になってるはず。だってユノだもん。