おにぎり2つとお茶のペットボトルが1本。

その3つが入った袋を抱えて、小走りで保健室に戻る。

担任の先生が迎えに来る前に、と急いでいた。

「……あ!」

そうっとドアを開けたら、体を起こしているユノと目が合った。

「起きても大丈夫?」

ホッとしてそばへ駆け寄るが、彼は驚いてわたしを見つめるだけ。

「倒れたんだよ、ユノ」

「あ……うん。さっき先生から聞いた。これから病院にも連れて行ってもらう……」

「え、先生もう来たの?」

いない間に担任の先生が来ていたことを知り、慌てて袋を差し出した。

「おにぎりとお茶……買ってきたの。お腹空いてると思って……」

ユノは差し出された袋を見つめ、困ったというかのような表情をする。

受け取ってもらえないような気がして、断られる前に口を開いた。

「ちゃんと食べたほうがいいよ! 太るのは体質なんだから仕方ないじゃん! 倒れるようなダイエットはしないで!」

袋から出したおにぎりをその手に持たせると、ユノは渋々、フィルムを開ける。

そして、食べ切った後、静かに見守っていたわたしを見つめた。

「オレ……“体質”だけで太ってたわけじゃないよ」
「え?」

「確かに太りやすい家系に生まれてはいるけど、ここまで太ったのは自分のせいだから……」

ユノはそこから話し始めた。アメリカでの生活を。

引っ越した当初は言葉が通じないことにイライラし、食べることでストレスを発散していたらしい。

そして、家族はみんなカロリーを考えた食事をしているのに、ユノは太り始めても“日本に帰る頃、痩せればいいや”と考えていたという。

「でも、痩せられないまま日本に帰った。……気づいてたよ、果歩ちゃんが太ったオレにがっかりしてたことは」

「え……」

「でも……オレ、果歩ちゃんと話したかったし……気づかないふりをしてた」

「あ……その、最初はびっくりしたけど……でも今は……」

「うん。果歩ちゃんは途中から普通に接してくれるようになったよね」

嘘でしょ……気づいていたなんて。

その頃の自分を思い出すと、ぞっとしてしまう。

言葉を詰まらせると、ユノは苦笑いを浮かべた。