「……告白の相手は、先輩が今“おデブさん”って言った湯前くんです!! この人じゃないし、先輩でもありません!!」

言ったことに後悔はない。

言わなきゃ誤解されたままだし、そのまま放っておけば、先輩は絶対に鮎川を攻撃していたと思う。スポーツ大会でユノを傷つけたように。

ユノをバカにする言葉も、もう聞きたくなかった。

でも、

「告白って……」

鮎川に驚かれ、一気に顔が熱くなる。

「あのデブに……告白?」

先輩はあ然とした表情で、途切れ途切れにつぶやく。

絶対、まだ何か言ってくるはずだ。そう思って構えてはいたんだけれど、

「僕がいるのに……?」

どうやら、わたしの言葉は先輩の想像できる範囲を超えていたようで。

「ちょ……乗田さん!?」

「……この僕が……デブに、敗けた?」

「しっかりしてください!!」

「そんなことが……」

3人が慌てて放心する先輩の体を揺らす。

それを見たわたしは“今のうちに”と考え、鮎川の腕を引っ張った。



「はぁっ……ここまで来れば、もう大丈夫でしょ」

中庭まで走ったわたしたち。

「ありがとね! 助けてくれて……あっ、しずちゃんに連絡しなきゃ!」

そろそろ、7時間目が始まる頃だ。

しずちゃんに昇降口から移動したことを伝えようと、ポケットに手を突っ込む。

「ホントやな男だよね……気持ち悪いし、すぐ人をバカにするし」

スマホを触りながら、ひとりで話し続けるわたし。

鮎川はずっと黙ったままだった。

けれど、メッセージを送ってスマホをポケットに戻したとき、一歩、二歩と近づいてくる。