「待った」

先輩が手を掴んでくる。

「相手はまさか」

好きな人が鮎川だと勘違いをしたのか、先輩は品定めをするような目で彼を見はじめた。

「ちが……」

「まぁ、ダイエット中のおデブさんよりはマシだけど……身長が高いだけで品がない。僕の足元にも及ばないな」

「……んだと？」

見下すような顔をされ、鮎川の表情も次第に険しくなる。

「まぁ、太っているよりはマシだから」

先輩は満面の笑みで鮎川の肩をポンポン叩いた。

「っ……」

鮎川はグッと怒りをこらえている。

けれど、もう一度、同じようなことを言われれば、きっと、そのまま殴りかかるだろう。

震える拳を見てそう感じたわたしは……。

「その“デブ”がいいんです!!」

ふたりの間に割り込んで、思いっきり声を張り上げた。

通り過ぎようとしていた生徒も思わず立ち止まってしまうほどの大声。
鮎川は叫んだわたしにびっくりしている。

ぽかんと口を開けていた先輩も、少しの間を置いてから「ん？」と首を傾げた。