「……先輩」
今日は3回も言った。
っていうか、もうホント無理だ。
「告白の相手……先輩じゃないんで!」
「さぁ、勇気を出して言ってごらん、“好きです”って」
きつく睨んでも、先輩の表情はまったく変わらない。
“ああ、やっぱ通じないか”と諦めかけたとき、
「……!」
突然、顔の前に大きな手が割り込んでくる。
その手は目と鼻の先にあった先輩の顔を覆い、グイッと向こうに追いやった。
「ユ……」
瞬時に“ユノだ”と思った。
入学式でも似たようなことがあったし、こういうときに現れるのはいつだって彼だったから。
でも、顔を上げたわたしは言葉を失う。
「嫌がってんだろーが」
そこにいたのは鮎川だったの。
「っ、いきなり何を……」
「それはこっちのセリフだ。ネクタイまでほどいて……バカじゃねーの?」
鮎川は言い返したあと、行く手をはばんでいた3人にも目を向ける。
そして、威圧感を与えるような態度をとった。
身長差があって、見上げる体勢の3人は、次第に平静さを失い。
「っ……」
その内のひとりが、しぶしぶといった様子で横にずれる。
鮎川はわたしの二の腕を掴んで、その隙間から逃がそうとしてくれた。
けれど、通り抜ける前に、