「“太ってからのユノくん”」

「……へ?」

太ってからのユノ……?

「過去のユノくんから現在のユノくんに更新された、って意味で言ったの」

口が開いたままのわたしにそう言って、しずちゃんはまたカートを引っ張りはじめた。

「再会してからのあんたはさ、かっこよかった頃の彼と比べることが多かったじゃない? “変わったのは見た目だけなのかも”とか言って」

「……うん」

「天秤にかける時点で、別の人のように感じていたのかもよ?」

「……“別の人”」

ゼッケンがついたしずちゃんの背中を見つめながら、この7ヵ月間を振り返る。

“ただいま……マイハニー”

たしかに、見た目は完全に別人だったけど……。

“昨日の果歩ちゃん、元気がないように思えたから……取りに行ったんだ”

菜の花を渡されたときに“やっぱりこの人はユノなんだ”と再確認したの。

そこからは同一人物だと思いたくない気持ちを抱きながらも、変わらない優しさに触れていって。

“果歩ちゃん!”

気がつくと、あの笑顔にホッとする自分がいた。

別人のように思っていたのかはよくわからないけれど……。

「好きに……なれたのかな、ユノのこと」

声にしながら、自分の胸に問いかけてみる。

それに反応して振り向いたしずちゃんは、

「なれたんでしょ」

わたしを見て、クスッと笑みをこぼした。

「まぁ……ヤキモチをやいてばっかのあんたを見てきたわたしから言わせてもらえば、“気づくのが遅ぇよ”ってツッコみたいくらいだけど」

「……はは。そうだよね」

好きになりかけていることには気づいていたけれど……。

「よくわからなかったの。自分の気持ちが……」

両想いだった自分たち。“逢いたい、逢いたい”と願い続けた3年間。

わたしにとってユノは“特別な存在”だったから、それでヤキモチをやいているような気もしていたの。

だけど、過去を切り離して今のユノだけを見ても……。