それから数日後の体育の時間、当番で倉庫にボールを取りに行ったわたしは、グラウンドでじゃれ合う男子たちの姿を横目で見ながら、小さくため息をついていた。
「肥満は体に良くないんだし、痩せられるなら痩せたほうがいいと思うけど?」
元気がない理由を聞いてきたしずちゃんに、イベントでのユノとのやり取りを話した。
彼女は“それの何が嫌なの?”と言うかのような表情で、首を傾げてくる。
「たしかに……健康のことを考えれば痩せたほうがいいよね」
「うん」
「少し前までのユノは食べすぎだったと思うし……」
「だね。間食をやめて食べる量を考えれば、体への負担も減ると思うよ」
そうだよね。
さすがにハンバーガー6個は多かったと思うし……。
「果歩は痩せてほしかったんじゃないの?」
しずちゃんはそう言って、カートから手を離す。
ほどけた靴ひもを結びなおす彼女を待ちながら、わたしは再び、グラウンドを眺めた。
「……」
視界の中にいるユノは、男子たちの中で楽しそうに笑っていて……。
入学当初よりも顔の輪郭は細くなっているし、お腹周りもだいぶすっきりしている。
「最近は……そこまで気にしてないかな」
再会した頃は変わってしまったことが本当にショックで、太った彼を受け入れるのには時間がかかった。
痩せさせようと考えていた日は、その気持ちが届かないことにイライラして、ひどいことも言った。
でも、そのあと鮎川から“ユノは太りやすい体質なんだ”ってことを教えてもらい、体型が変化しても中身は変わらないようにしている彼を“強い”と思ったの。
それからは、太っていることが気にならなくなった。