「……」
黙って、ユノのお腹を見てしまう。
ユノはお腹にそっと手を当てて、気まずそうに目をそらした。
「やっぱ空いて……どっか食べに行こう?」
まだ話の途中だけど、“先に何か食べたほうがいい”と判断して、階段から立ち上がる。
けれど、ユノは恥ずかしそうに笑うだけで、同じように立ってはくれない。
「あ、じゃあさ、お菓子をもらいに行こう!」
わたしが動けば嫌でもついてきてくれるだろう。
そう考えて、先に歩き出すことにした。
ところが、
「果歩ちゃん……」
ぎゅっと掴まれた手首。
足を止めて振り向くと、ユノは座ったまま、まっすぐな瞳で見つめてくる。
「オレ、痩せたいんだ」
真剣な表情にドキッとした。
「痩せて……かっこよくなって、果歩ちゃんを振り向かせたい」
手首から伝わる熱。
「だからお菓子はやめとく!」
「……ユノ」
迷いのないき然とした態度に、胸がつまる。
「食べなきゃ……体壊すよ」
「大丈夫! ちゃんと食べてるから!」
にこやかな表情……。
わたしは複雑な気持ちを抱きながらも微笑み返す。