「オレこそごめんね」

「……え」

謝られてぽかんとする。

ユノは気まずそうな表情で目をそらした。

「オレなんかといるよりも、あの3年といるほうが楽しいんじゃないかなって……」

「……キラオ先輩と?」

なんで、ここで先輩の話が出てくるの?

そういえば、さっきもツインテールの話をしていたのに……。

“果歩ちゃんはあの3年に見つかりたかった?”

……まさか、ユノの目にはそういうふうに映ってるの?

「え……先輩に断るところ、見てたよね?」

思い出してよ、ユノ。

あのときのわたし、先輩にキレてたよ?

ユノと行くから、ってきっぱり断ったはずだし。

「あれは、果歩ちゃんがオレに同情して……」

「っ!? そんなわけ……!!」

どうしてそうなるの!?

たしかに、あのときのわたしは傷ついた表情のユノを見て、可哀想に思っていたかもしれない。
でも、それで断ったんじゃない!

こんな人は嫌だ。そう思って断ったんだよ。

一緒に行きたい相手はユノだった。だから、“ユノと行く”と言ったのに……。

「わたしは先輩のことなんて……」

急いで誤解をとこうとしたけれど、ユノは話も聞かずに口を開く。

「あの3年の人、果歩ちゃんのタイプでしょ?」

「……へ?」

突拍子もない言葉に耳を疑った。

目が点になったわたしを見て、ユノは苦笑いを浮かべる。

そして、口角を上げたまま、パレードのほうを向いた。

「わかるよ、それくらい。……あの人をはじめて見たとき、あのマンガみたいな人だなって思ったし」

「“あのマンガ”?」

「……手紙と一緒に送ってくれたマンガ」

その言葉で思い出したのは、中学時代の自分。

そういえば、送ったことがある。手紙にそのマンガの感想も書いて……。

「なんとなく似てるよね、あの3年に」

「……え?」

似てる? 先輩に? ……そんなふうには思えなかった。
だって、わたしの中であのキャラクターのイメージはユノだったから。

勉強もスポーツもなんだってできる。そんな男の子との恋物語だから、主人公を自分に置き換えて読んでいた。

“相手の男の子が引っ越す”ってところも同じだったから、わたしたちみたいだねって気持ちで感想を書いたんだよ。

「っ、あれは……」

先輩じゃない。ユノなんだよ。

そう言おうとしたとき、グウウという音が耳に入った。