街全体を包む大音量のメロディーが、アップテンポなものからバラードなものに切り替わった。
それを機に、わたしの目は隣に向く。
ユノは大通りの様子をわくわくした表情で眺めていた。
“オレ、日本でハロウィンイベントに参加するのが夢だったんだ!”
何をやっているだろう、こんなところで……。
「ん?」
視線に気付いて、笑顔で首を傾げてきた。
つまらなさそうにはしてないけれど……。
「なんかごめんね……本当は、もっと楽しめるようにしたかった……」
と言っても、わたしは一緒に参加することしかできないけれど。
でも、こんな暗がりからパレードの様子を眺めるだけじゃ“夢が叶った”とは言えないだろう。
謝ると、ユノは小さく笑みをこぼし、優しい顔をする。
「果歩ちゃんと一緒だから、楽しいよ?」
「っ……」
笑ってそんなふうに言い切られると、イライラして突っかかって、せっかくのイベントを台無しにしてしまった自分が嫌になる。
「……ごめん」
しつこく勧誘してくる彼女といつまでも仲良くしていることが気に入らなかった。
迷惑がっていてほしかったの。嘘でもいいから、そういうフリをしてほしくて……。
連絡先を教えていたこともわかって余計に腹が立った。
わたしの前で堂々とメッセージを読んでいることが嫌だったの。
わかってたよ、これもヤキモチなんだろうなって。
わかっていたけど、そんな自分は見せたくなくて……。
結果、そっぽを向いて、困らせるようなことばかり言ってしまった。
付き合ってないんだからイライラすること自体が間違っている。
逆にムカつかれても仕方がないはずなんだ。
なのにユノは、笑って「楽しい」って……。