「じゃあ、もう……ひとりで食べちゃうよ?」

「うん!」

数ヵ月前のわたしも、先輩のようにきつく言ったことがある。少しはダイエットをしたら、と。

そのときのユノはここまで真剣に受け止めてはいなかった……。

“僕には自分を甘やかしている体にしか見えないけど?”

食べることを控えるようになったのは、あの日から。

先輩の言葉に傷ついたのだろう。

でも、そこまで追い詰めたのは先輩だけじゃないはず。

きっと、わたしの言葉もユノの胸に傷を作っていたと思う。



「果歩ちゃん、もう始まってるみたいだよ!」

「あ、本当だぁ!」

レジでの支払いを済ませて、店の外に出る。

ファミレスのドアが開いた瞬間から、外の明るい音楽が大音量で聞こえていた。

街全体がそのリズムに合わせて踊っているかのような賑やかさ。

店ではおとなしかったユノの表情にもパッと灯りがついた。

わたしたちは人ごみをかき分け、縦一列になって歩く。

目的地は記念のフォトブースがあるという駅前の広場だったんだけど……。

「ど、どうしたの?」

前にいたユノが、突然、足を止めた。

背中にぶつかったわたしは、ひょっこり顔を出してその視線をたどる。

「……げっ」

そこで見かけたのは、今いちばん会いたくない人の姿だった。

「子猫ちゃ~ん! どこかなぁ~? 恥ずかしがらずに出ておいで~!」

童話に出てくる王子様のような格好をしたキラオ先輩が、人ごみの中からひとりだけ飛びぬけて顔を出している。