ハロウィンパーティー当日の夕方5時、わたしとユノはパレードが行われるという大通りの一歩手前の道で落ち合った。

「ドレス、似合う!! 写真、撮ってもいい!?」

到着すると、先に着いていたユノは満面の笑み。

興奮した口ぶりでスマホのカメラを向けてくる。

「い、いいけど……撮るなら、もっと人が少ないところで……」

花火大会と同様、ユノはひと目を気にせず「かわいい」を大きな声で連発。

恥ずかしくて「移動しようよ」と声をかけても、周りなんて気にしないと言うかのように、シャッターボタンをパシャパシャ押してくる。

「……もう」

まぁ、いっか。心から楽しんでそうな表情を見るのは久しぶりだし。

ドラキュラの格好をかわいらしく思いながら、ドレスの裾を広げた。

にしても、真っ白な肌にパンダみたいな目もと……。

「ねぇ、ユノ……そのメイクは自分でやったの?」

「うん! 買った衣装の中にメイクキットも入っていたから!」

最近のユノはお弁当を残すことが多くて、少し痩せたみたい。

お腹周りも以前よりはすっきりしているし、頬の下に塗ってあるグレーもちゃんと影に見える。

「へ、変かな?」

「ううん。ちゃんとドラキュラに見えるよ」
「ホント?」

「うん……あ、キバまでつけたの? すごーい!」

わたし、今、ホッとしてる。

心配した分、笑った顔を見ると本当にうれしくて……。

「うわぁ……もうこんなに人が。パレードって7時からだったよね?」

「うん。そうだと思うけど……」

道路はもう人だかり。派手なコスプレをした人たちでうじゃうじゃしていた。

ポーチからあのポケットティッシュを出し、開始時間を確認する。

「あ、ユノ……今気づいたんだけどさ。これ、クーポン券になってるよ」

「ん?」

「ほら、ここ。“パンプキンケーキをプレゼント”って……」

チラシの角は切り取れるようになっており、それはファミレスで使えるチケットだった。

内容を読んでみたところ、このチケットを店員に見せてから食事メニューを頼むと、無料でデザートを出してくれるらしい。

「ユノ、晩ご飯はもう食べた?」

「……まだだけど」

「わたしもまだなの! 7時まで時間があるし、今から行ってみようよ!」

ユノは甘いものが好きなひと。

きっと喜んで、うんうんと首を縦に振るだろう。
そう思っていたんだけれど、