「太ってない湯前くんは湯前くんじゃないの!」

次に聞いた言葉はわたしたちが期待したものではなかった。
「……え」

当人は真剣な口ぶりだけど、あ然としてしまう。

しずちゃんもポカンと口を開けていた。

ツインテールはすっきりした表情で、ユノに微笑みかける。

「ピカルンもね、このイベントに湯前くんを誘おうと思ってたの! お菓子が配布されるんだって! 食べたいでしょ?」

ええ……。

「相撲部のみんなで衣装をそろえるつもりなの! 湯前くんの分も用意するね!」

なんか、もう……呆れてモノも言えない。

ビシッと言ってくれるのを待っていたのに、ズレた言葉……。

この人は相撲部のことしか考えられないの?

「カホのことは僕に任せて、キミはうちの妹と行っておいで」

フッと笑って勝ち誇った表情の先輩。

ユノはもう言い返す気力もないようで、ぼうっとしたままだ。

その耳には誰の声も届いていないように見えた。

「……カつく」

「果歩……?」

しずちゃんから離れ、3人のもとへと歩みを進める。

先輩の目がわたしに向くよう、間に割り込んだ。